子犬系男子は待てを知らない


「ちょっと待った!」

「……え?」


突として口元をガードして叫んだあたしに、雪平く……諒くんは大きく目を見張った。


セーフ。

こんな頭でも思い出せてよかった。

忘れかけてたけど、あたし今風邪ひき真っ只中なんだった。


「……璃子ちゃんに嫌がられた」

「違っ、嫌とかじゃなくて……。もうすぐテストでしょ? 風邪うつすわけにはいかないから」


わーーーっ、どうしよう。

雪平くんめちゃくちゃシュンてしてる。


あたしは身体を起こし、雪平くんの腕を掴みながら俯く顔を覗き込んだ。


「だからその、今度改めて……。テストが終わったら……したいなぁって。それだと、時間もたっぷりあるし」

「……」


あれ?

あのー、話聞いて──。

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