子犬系男子は待てを知らない


***



「ありがとう、諒くん」

「ううん。それより璃子ちゃん、あのことちゃんと覚えてる?」

「……あのこと?」


1階にある職員室から帰る途中、口角を高くしながら言った彼の言葉に、あたしは露骨に首を捻った。


「だめだよ、自分の発言には責任もってくれなきゃ」


……はて。

彼は一体何を言っているのだろうか。


「期末テスト、この前終わったでしょ?」

「え、うん……」

「ということは。これから時間、たっぷりあるもんね、璃子ちゃん」


……あっ!


「思い出した?」

「……うん」


そんなこと、この口が言ったような気がする。

だけど。

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