子犬系男子は待てを知らない


──キーンコーン……。


予鈴が鳴り響く中。

プリントの山で壁を作ったあたしたちは、そっとキスをした。


「っ、んっ」

「ごめん、足りない……」

「……あたしも」


1回だけじゃ止まらなくて、何度も重ね合ったのは、二人だけの秘密。




「……俺たち悪い子だね」

「だね」



***



「遅かったな」


ぎりぎり本鈴前に間に合ったあたしたちを見るなり、山岡くんがそんなことを言った。

二人してギクリと肩を震わせたのは、言うまでもない。


「「そうかなあ?」」


なんて声が揃っちゃったのは、おかしかったな。

頑張って耐えたけど、結局我慢できずに笑っちゃった。


──そっか。

この時あたしはふと思ったんだ。


……こういうのを、失くしたくない幸せって言うんだろうな、って。



-End-
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