子犬系男子は待てを知らない
*
「お待たせーー!」
夏休み。
炎天下の中、遠くから長い髪を揺らしながら一人の少女が走ってきた。
俺は発見するなりすぐに大きく手を振る。
「璃子ちゃん、おはよ」
璃子ちゃん──藍原璃子ちゃんは、俺の高校のクラスメイトだ。
そして──。
「ごめんね〜、せっかくのデートなのに遅くなっちゃって」
「ううん、ちょっと心配はしたけど大丈夫」
俺の、初めての恋人でもある。
明るくて、優しくて、正義感が強い。
困っている人がいると、真っ先に飛び出す。
璃子ちゃんは、俺が今までに出会ったことのないタイプの子だった。
実際、今日だって道探しをしていた人を助けて遅くなったらしい。
だから遅れても怒ってないし、むしろすごいと感心している。
そんなところが、好きになったんだから。