子犬系男子は待てを知らない


「行くよ」


耐えきれなくなって手を握る。

ぎゅっと、自分のものだと示すように。



「はぁ……なんでそんな可愛いかなぁ」

「諒くん?」



こうやって手を繋ぐのは、何回目だろう。


数えてないからわかるはずもないけど、重なった部分が堪らなく熱くなることはいつも同じ。

きゅーっと、幸福で満たされる感覚が全身を埋めていく。


好きな人と手を繋ぐことが、名前を呼ばれることが、両想いになることが、こんなにも嬉しくてドキドキすることだったなんて、今まで全く知らなかった。


少し前まで、自分が恋をするなんて考えてもなかったら、当然のことなのかもしれないけれど。

それが、必然のように巡り会って、

いつの間にか底のない沼へ落ちてしまっていた。


璃子ちゃんと出会ってから、初めてだらけの連続である。

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