子犬系男子は待てを知らない
結局問題を解く羽目になって、しかも不運にもたまたま激ムズ問題を選んじゃってたおかげで貴重な時間を結構ロスしちゃったけれど、大丈夫。まだ心は折れてない。
相手はあの〝天然鈍感〟で有名な雪平諒だ。
このくらいのことは想定内だし、あたしには次の一手がある。
「ねぇ、今日ちょっと熱いね」
「そう……っ!」
よしっ、食いついた。
さりげなく脱いだ羽織りの下には、ノースリーブのサマーニット。
いつもよりちょっと攻めた格好のあたしに、さすがに意識して──。
「ごめん気づかなくて。今冷房下げるね」
「へ」
あたしが唖然としている間に諒くんはリモコンを操作し、ついさっき脱いだばかりの羽織りをあたしの肩にパサッと被せた。
「身体冷やしちゃいけないから」
「……あ、ありがとう」