子犬系男子は待てを知らない


……なんか妙に緊張しちゃったな。

一人になって、やっとその時肩の力が抜けるのを感じた。


あの雪平くんにバレるほど動揺しちゃうなんて。


だけどこればっかりは仕方ないよね。

いきなり好きになるとか言われたら、そりゃ普通にできないって。



「はぁ……」


早く慣れなきゃなんだけどなぁ。




「え──」


階段を数段登ったところでふと立ち止まり、後ろを振り返った、んだけど……。


「へへっ」


そこには、まるで悪戯がバレた子犬みたいな顔をした雪平くんが立っていて。


「どうしたの?」


さっき向こうへ行ったはずじゃ。


「や、見送りたくってさ」


階段の下から少し張って言った彼の言葉に、あたしは不覚にもきゅんとしてしまった。



< 36 / 352 >

この作品をシェア

pagetop