子犬系男子は待てを知らない
【だからしばらく恋愛はいーんだって!】
あたしは胸の中の渦をかき消すように文字をタップし、送信ボタンを押した。
【ごめん。そーよね】
【ううん、気にしないで】
愛花は知ってるんだ。
あたしが、〝こうなってしまった〟理由を──。
「って、やば。髪乾かすの忘れてた!」
早く乾かそ。
スマホをテーブルに置き、ドライヤーに手をかける。
「っ!」
スイッチを入れてすぐ、鏡越しに左の腕にできたアザを発見したあたしは、自然と手を止めた。
ああ、そっか。あの時の。
思いっきり階段から転げ落ちたんだもんな──。