子犬系男子は待てを知らない
「な、なんか今日、あ、熱くなぁ〜い? ねぇ山岡くん? あははは……」
パタパタ手で顔を扇ぎながら助けてぇと隣に目線を送る。
「……」
いや何か言ってよ!
呆れてるのかなんなのか無視を決め込む山岡くん。
ちょっとムッとしたあたしは距離を詰め、彼のセーターの裾を引っ張り主張する。
「ちょっと、山岡く──」
「近づきすぎ」
「へ?」
突然パシッと手首が掴まれた。
そのまま、後ろに強く引かれたかと思った刹那、ポスッと何かにぶつかって。
「いくら啓吾でもダメだよ」
鼓膜を揺らした、いつもより低い声。
ようやくその時理解が追いついた。
あたしの背中に当たっているのが雪平くんだとわかるや否や、身体中の血液が一気に集まったみたいに顔が熱くなる。
「っ、えっと……?」