子犬系男子は待てを知らない


『……ごめん。俺、お前のこと母ちゃんに見えてきたわ』


今でも忘れない。

別れ際にあたしに言った言葉。


ねえ。

あの時あたしがどんな気持ちだったか、アンタ知ってる?


「あたし……重いんだって」


今思えば、やりすぎだったのかもしれない。

好きって想いを全力で捧げたかっただけなのにさ?


「いっつもそうなの。周りが見えなくなって、勝手に一人で頑張って……」


失敗してしまう。


それからあたしは、恋をするのをやめたんだ。

きっと自分には向いてなかったんだって。

そう思ったら、楽になれたから。


「ははっ、笑えるよね!」


ほんと……笑え……。


「璃子ちゃん……泣いてる」

「ち、違っ」


その瞬間、ふわっと何かに包まれた感覚がした。

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