恋の微熱に溺れて…

1度:犬系には要注意

来年で二十代ラスト。あっという間に歳だけを重ねてしまった…。
葉月(はづき) 京香(きょうか)。二十八歳。独身。彼氏が人生で一度もいたことがない、可哀想な女だ。
でも、そんな可哀想な女も恋はする。その恋のお相手は年下で。イケメンで。社内で一番人気の男。
高望みだということは重々承知している。そんな彼を意識するようになったきっかけは、漢字違いの同じ苗字であるということだった。
私は葉っぱに月と書いて、葉月。彼は羽に月と書いて、羽月(はづき)
たったそれだけ?と思うかもしれないが、恋愛経験が乏しい私には、充分気になる理由となった。
でも、私なんかには手が届かない存在。想うだけ無駄だと知りながらも、気持ちが消えることはなかった。


           *


想い続けるだけで月日は経過し、特に接点もなく。
もうどうにもならないし、そろそろ諦めようと思った矢先の出来事だった。

「えー。皆様に大事なお知らせがございます。我社にとても大きな仕事を任せてもらえることになりました。
今からその大きな仕事に向けて、新しいプロジェクトを立ち上げます。各部署から数人、選出してください。よろしくお願いします。それでは以上で、朝礼を終了とさせて頂きます」

社長は言いたいことだけ言って去った。
社内はザワついていた。各部署の課長が社員に詳細を説明し、どんな大きな仕事が舞い込んできたのか、知ることとなった。
社員の反応はバラバラで。面倒くさそうにしている人もいれば、興味がない人、やる気に満ち溢れている人もいた。
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