恋の微熱に溺れて…
焦らされて飢えた狼みたいな目をしている。これはシャワーを終えた後のことを考えると、何をされるのか分からず、恐怖を感じた。
慧くんと一緒に居ると、色んな自分を知ることができる。時々、そんな自分に戸惑ったり、驚いたりしてしまう。
でも、そんな自分が嫌いじゃない。今までより輝いているような気がして。そんな自分が好きだ。
そんな自分を作ってくれた慧くんが、もっと好きだ。どんどん愛おしさが増していく。
そう思うと、こうして私を求めてくれる慧くんを見れて嬉しく思う。
手早くシャワーを済ませて、慧くんの元へと向かった。慧くんの表情は更に緩み、優しく笑んだ。

「お待たせ致しました…」

ゆっくりと身体を湯の中に入れていく。心地良い湯の温度に、日頃の疲れが解れていく。これこそ至福の時だと実感する。

「…ふぅ。良いお湯」

思わず心の声が漏れてしまう。その声に慧くんも反応する。

「良いお湯ですね。疲れが癒やされます」

慧くんも同じことを考えていたみたいで。より幸福感が増した。

「うん。癒やされるね。毎日こういうお湯に入りたいくらいに…」

実際は特別な時に入るからこそ、いいものなのかもしれない。
頭ではそう分かっていても、つい大袈裟に表現してしまう。それぐらいこの温泉の良さを伝えたいという一心で。必死だった。
< 100 / 133 >

この作品をシェア

pagetop