恋の微熱に溺れて…
次の瞬間、慧くんが後ろから抱きしめてくれた。
肌と肌が触れ合う。それだけで心も身体も心地良さに満たされていく。
もしかしたら、慧くんと私の肌感覚の相性が良いのかもしれない。
ただ触れ合うだけで、こんなにも気持ちいいなんて、私は知らなかった。

「いえいえ。こちらこそです」

互いに気恥ずかしくなり、沈黙のままお湯に浸かった。
そろそろ逆上せるかもしれない手前で、慧くんが、「そろそろ出ましょうか」と言ってくれた。
私は首を縦に頷き、一緒にお風呂を出た。
脱衣所で一緒に着替えるのは恥ずかしかったけど、一緒にお風呂に入るのに比べたら、まだマシだった。
手早く着替えた。旅館の浴衣に。下着を着けようか迷ったが、一応着けておいた。
慧くんはどうするのか気になり、チラ見させてもらったら、下着を着用していたので、私も真似した。
仮に慧くんが着なかったとしても、私は心許ないので、下着を着用していたと思う。
少しだけ想像してしまう。下着を着用していない慧くんを。とてもセクシーなんだろうなと思うと、鼻血が出そうになった。

「…京香さん?どうかしましたか?」

相当変な顔をしていたのであろう。訝しげな顔をしていた。

「なんでもないよ。あはは…」

笑って誤魔化した。そうせざる得なかったといった方が正しい。何を考えていたのかバレたくなかったからである。

「…あっ。もしかして、期待してます?」

核心を突かれて、胸の鼓動が一気に高鳴る。
やっぱり隠しきれなかったみたいだ。隠しても仕方がないので、白状しようと決めた。
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