恋の微熱に溺れて…
「大人ならではの楽しみ方ですよね。早くお酒が飲みたい…」

美味しいお酒の味を想像するだけで、今から涎が出そうだ。

「うん。早く飲みたいね」

早く戻ってお酒が飲みたい。美味しい料理も一緒に。

「早く主室(へや)に戻って、お料理も楽しみましょうか」

どうやら慧くんも、同じことを考えていたみたいだ。
ここは早く戻って、美味しいご飯に舌鼓を打ちたい。

「うん、そうしよう!…楽しみ」

二人で一緒に主室へと戻り、旅館の人に電話をかけて、お酒を客室まで運んでもらうことにした。
その間、何も喋らずにゆっくりとした時間を過ごした。何もしない時間に幸せを感じるなんて思いもしなかった。これも慧くんのお陰だ。
そんな幸せの余韻に浸っているタイミングで、旅館の方がお酒と食べ物を運びにやって来た。

運ばれて来たお酒と食べ物は、とても美味しそうで。あまりにも美味しそうなので、口の中が涎で溢れ返っている状態だ。

「美味しそう…」

「ですね」

お互いに考えていることは一緒みたいだ。口数も一気に減ったので、ここは腹の虫を優先した方が良さそうだ。

「それじゃ、食べて飲みしょうか」

慧くんが流れを誘導してくれた。私はその流れに乗った。

「うん。そうしよう」

せっかく運んでもらったので、ここで美味しいものを堪能しない方が勿体ない。
早く食べたいという気持ちが抑えきれず、手を伸ばしたいという衝動に駆られるが、意地(きたな)いので我慢した。
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