恋の微熱に溺れて…
「…お酒、注ぎますね」

慧くんが私のグラスにお酒を注いでくれた。まずはビールを…。

「ありがとう。私も注ぐね」

今度は私が慧くんのグラスにお酒を注いだ。同じくビールを。

「ありがとうございます。乾杯しましょう」

グラスを持ち、互いに乾杯の準備を始める。

「それじゃ、乾杯」

「乾杯」

互いのグラスを優しくぶつけ合う。そっと触れるかのように…。
そのままグラスに口付け、ゆっくり口の中にビールを流し込む。程良い冷たさと泡が、お風呂に入って乾いた喉を潤していく。

「…んー、美味しい」

思わず声が漏れてしまう。そんな私を見て、慧くんが優しく微笑んだ。

「美味しいですね。京香さんと一緒に飲んでるから、より一層美味しく感じるんだと思います」

そんなことを言われたら、一気に酔いが回りそうだ。

「…もう。そんなことを言われたら、すぐに酔っちゃうじゃん」

少しふざけてみた。こういうやり取りさえも、イチャイチャできると思ったからである。
でも、この時の慧くんの反応は、私の予想と違った。私の目を熱い視線でまっすぐに見つめてくる。
その視線に全身の熱が上昇していく。この状況をどうしたらいいのか分からず、反応に戸惑ってしまう。
そんな私を見て、慧くんはよりまっすぐな視線を向けてくる。
慧くんの意図を私は上手く汲み取れず、更にテンパるだけなのであった…。

「酔って下さいよ。酔ってる京香さんが見たいです」

真剣に言われても、どうしたらいいのか分からない。
お願いされなくても、既に酔ってしまいそうだ。お酒よりも慧くんの色気に…。
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