恋の微熱に溺れて…
「慧くんになら、いくらでも見せてあげるよ」

私なりの遠回りなお誘いだ。同時に慧くんにも酔ってほしいという願いを込めて…。

「それじゃ、後でたくさん見せて下さいね」

悪戯な笑みを浮かべていた。これは逆らえない流れだ。
温泉旅行…という段階で、そういうことになる予感はしていた。
だから、それなりに準備はしている。無駄毛などの処理も含め、可愛い下着だって身に着けている。
私だってそれなりに期待している。いつきてくれても大丈夫なように、ちゃんと準備している。

「う、うん。頑張る…」

これじゃたくさん慧くんと肌を重ねたいと誘っているようなものだ。
それはそれで間違っていないが、今はまだこの美味しい料理とお酒を堪能していたいという気持ちの方が大きい。
できればご飯を食べ終わった後、そういう時間を大事にしたい。敢えて言葉にして伝えずに、慧くんに上手く察してもらえたら有難い。
それを態度で表しながら、軽く訴え続けた。それが通じたのか、慧くんが私の頭に触れてきた。

「そんなに気負わないで下さい。いつも頑張ってくれていますので、いつも通りで大丈夫です」

言葉にしなくても、通じるということを知った。
同時にあまりそういったことを考えるのは止めようと誓った。目の前のことだけに集中し、一つひとつのことを楽しむことにした。

「そうだね。そう言ってくれてありがとう」

私がそう言うと、慧くんは安心したみたいで。グラスに残っているお酒の続きを飲み始めた。
私も真似して、グラスに残っているお酒を一気に飲み干した。そのため、グラスが空になってしまったので、追加でまたビールをグラスに注いだ。
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