恋の微熱に溺れて…
でもおかしい。先程飲み干したはずなのに、喉の渇きが癒えてくれない。そのせいもあり、飲むスピードがどんどん速くなっていく。
本当の意味で酔ってしまいそうだ。これじゃ酔い潰れてしまいそうなので、飲むのを一旦、止めた。
私が酔い潰れたら、慧くんがガッカリしてしまう。せっかくの温泉旅行を台無しにはしたくない。
私だって期待しているのだから、ここで何もないのは嫌だ。思い出は一つでも多く残したい。
頑張って酔いが回らないよう、意識を強く持った。
そんな私を見て、慧くんは私に合わせて、ゆっくり飲んでくれている。
私と違って、お酒が強いのであろう。まだまだ余裕そうだ。
そんな慧くんを見て、私は更に彼への愛情が深まった。

「京香さん。お酒ばかりじゃなく、料理も食べて下さいね」

慧くんが小皿に料理を盛ってくれた。そのまま装ってくれたお皿を手渡してくれた。

「ありがとう。…頂きます」

お皿に装ってくれた料理を、せっかくなので頂いた。
一口口に含んだ瞬間、すぐに旨味が口の中に広がり、気がついたらあっという間にお皿から料理がなくなっていた。

「…もうなくなっちゃった」

意地穢いと思われたに違いない。大人なんだから、もっとゆっくり食べなさいと。
でも、慧くんの反応は、想像とは違った。いつも通り優しく微笑んでいた。

「おかわりしますか?」

首を縦に頷いた。はしたないかもしれないが、食い意地を張っているという自覚はある。
それぐらい、ここの旅館のお料理が美味しい。箸が止まらなくなってしまうくらいに…。
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