恋の微熱に溺れて…
「はい、どうぞ」

私が手渡すと、すぐに慧くんは受け取ってくれた。
ただ装っただけなのに、受け取ってもらえただけで嬉しかった。

「…頂きます」

慧くんが口を大きく開けて、私が装った料理を食べ始めた。
その姿がとてもセクシーで。こんな感覚は初めてで。妙にドキドキしてしまった。

「…どうかしましたか?」

私があまりにも凝視してしまったため、不思議に思ったのか、慧くんは訝しげな表情を浮かべている。
私は慌てて取り繕った。怪しまれないように…。

「どうもしないよ。それ美味しそうだなと思ったら、ぼーっと眺めちゃって」

「そうなんですか?それじゃこれ、俺が取ってあげますね」

私のお皿を奪い、お料理をお皿の上に装ってくれた。

「はい、どうぞ」

手渡されたのを受け取り、頬張って食べた。
誤魔化しのために適当なことを言ったが、その時の自分に感謝したいなと思うくらい、とても美味しい。

「…これ、めちゃくちゃ美味しい」

気がついたら、またお皿の上の料理がなくなっていた。
それぐらい、美味しい料理に舌が唸った。これはなくなるまで食欲が尽きそうにない。

「美味しいですね。あまりにも美味しすぎるので、ずっと食べていたいくらいです」

大袈裟な表現に聞こえるかもしれないが、それぐらい料理が美味しい。
その気持ちがよく分かるので、慧くんの気持ちに共感した。
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