恋の微熱に溺れて…
「お試しじゃ難しいというのでしたら、正式にお付き合いできるまで、キスの先は我慢します。でも、キスと手を繋ぐのだけは、お試し期間中もさせて頂きたいです」

ここまで真摯に自分と向き合ってくれる彼に、落ちない女はいない。
それに私も元々、慧くんが気になっていたので、私としてはそんな相手に告白されて嬉しいし、恋愛経験も欲しかったので、この提案に乗ることにした。

「私でよければ、よろしくお願いします」

キスとか、その先の展開とか、私にはよく分からない。
ただ相手が慧くんなら、初めてを捧げてもいい。そう思った。

「本当ですか?!嬉しいです。京香さんは今日から俺の彼女ですね」

正面から抱きしめられた。抱きしめる力の強さから、想いの強さも伝わってきた。

「俺、すげー幸せです」

いつの間にか、一人称が俺になっていることに気づく。
彼が自然体になっているのかと思うと、嬉しかった。

「私も幸せだよ」

同じように好きだよと言ってあげたいが、今の私にはまだ恥ずかしくて言えない。
いつか言えたらいいなという気持ちを抱きながら、私はこの日、慧くんとお付き合いを始めることになった。
< 12 / 130 >

この作品をシェア

pagetop