恋の微熱に溺れて…
「どういうこと?」

「付き合う男性が上手いと相手のことが欲しくなるけど、下手だと地獄のように感じて、欲しないってこと」

経験がない私には比較対象がないため、そう言われても分からない。
でももし、とても愛を感じなかったから、それはとても辛い。心も身体も。
そう思うと、地獄という言葉は間違いないと思った。そんなの欲しないのは当然だ。

「なるほど。優希はそういう経験があるの?」

踏み込み過ぎたかもしれないが、思い切って聞いてみた。経験がないと、実感がこもって言えないと思うから。

「あるよ。実際、なんでも相性ってあると思うから」

相性…か。慧くんしか知らない私には、まだよくその点が分からない。人として合う合わないは分かるが、皆よくそういったことが分かるなと思う。それだけ経験があるということだろう。

「相性か…。私はよく分からないかも。比較対象がないし」

「それはそうかもしれないけど、京香は一発で良い人を当ててるから、すごいことだよ」

確かになかなかないことだと思う。それでも分からないことは分からない。
でも私は知らなくていい。慧くんが大好きだから。

「そうだね。運に感謝しないと…」

込み入った話をしている途中で、店員さんが食べ物を運びに来た。
会話の内容がアレなので、一旦、会話を中断し、店員さんが去るまで待った。
< 131 / 133 >

この作品をシェア

pagetop