恋の微熱に溺れて…
「まだ唇にはキスしていないですよ?」

悪戯を思いついた子供のように、意地悪な笑みを浮かべていた。
私はその笑みに、更に窮地に立たされていた。

「そ、それはそうだけど…、それでも恥ずかしいの……」

私にはこういった経験がないため、余裕がない。
今、この場に好きな人と二人っきりという空間に居るだけで、胸がいっぱいだ。

「実は俺もめちゃくちゃ緊張してます。だって、好きな人が自分ん家に居ると思うだけで、どうにかなりそうです…」

慧くんも余裕がないのだと知り、嬉しく思った。だって、その原因が自分だから。

「そうだったんだ…。私はってきり、めちゃくちゃ余裕があるのかと思ってた」

「そんなの、全然ないです。俺がどれだけ京香さんを想い続けてきたことか」

いつから私を好きなのかは知らないが、自分の想像よりも前から好きなことが分かって、嬉しかった。

「ありがとう。私のことを想い続けてくれて…」

慧くんが思い続けてくれていなかったら、こうして慧くんとお付き合いすることもなかった。
今、こうして、慧くんとお付き合いしているという事実だけで、私は幸せを感じた。

「俺の方こそ、ありがとうございます。こうして、京香さんとお付き合いできて幸せです」

慧くんはいつだって、まっすぐに言葉を伝えてくれる。
そのまっすぐさに、私はいつも心が満たされている。
だから、私は幸せなのだと実感することができる。
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