恋の微熱に溺れて…
「これだけじゃないんです。座って待っててください」

俺は冷蔵庫にあるものを取りに向かった。
ここまではなんとかスムーズにサプライズを成功させている。
これが最後のサプライズなので、絶対に成功させたい。
落としたりしてケーキを崩さないように、慎重に冷蔵庫の中から取り出し、リビングまで運ぶ。
なんとか失敗せずに京香さんの元まで運ぶことができた。

「お待たせ致しました。実はケーキも準備してました」

目の前のテーブルの上にケーキを置くと、京香さんは目を大きく見開き、驚いてくれた。
その様子を見て、俺は本当にサプライズをして良かったと思えた。好きな人の喜ぶ顔がこんなにも嬉しいことなんて知らなかった。
これからも京香さんの喜ぶ顔が見たい。喜ばせられるように、京香さんの傍で支えられるように、一人の男として成長したい。

「記念日用に特注で作ってもらいました。どうですかね?」

やり過ぎただろうか。普通に既存のケーキを用意した方が良かっただろうか。
京香さんの反応が気になる。引いていたらどうしようという焦りが募る。

「ありがとう。慧くんの気持ちが嬉しい。私と慧くんだけのケーキなんて特別で。もう一生の宝物だよ」

そう言ってもらえて、彼氏冥利に尽きる。自分の愛情表現を彼女にまっすぐ受け止めてもらえて、最高に幸せだ。
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