恋の微熱に溺れて…
「早く前へ進んでもらわないとこっちも困りますからね。いつまでも想い続ける男なんて重すぎて、ストーカーと一緒ですからね」

後ろから愛おしい人の声が聞こえた。相変わらず慧くんは如月くんのことが気になっているみたいだ。

「お前…。そろそろ俺をマークするのは止めろ。もう普通に同僚としてか見てないからな」

如月くんの気持ちはもうとっくに吹っ切れている。それが分かり、少しでも慧くんの心の負担が軽くなることを願った。

「こちらとしてはとても有難いんですが、まだ俺は完全にあなたのことを信用してませんので」

慧くんって顔に見合わず、嫉妬深いし独占欲が強い。ここまで想ってもらえて嬉しいが、時に怖くなるほどの愛情の深さだ。

「…はぁ。葉月、いい加減この彼氏の嫉妬深さ、どうにかしてくれ」

本当に如月くんは困った表情を浮かべていた。私にどうにかできたらいいのだが、どうにもできそうにない。

「あんな男なんてさておき、もう今日の終業時間ですので、京香さん一緒に帰りましょ」

まだ社内には多くの社員が残っている。それなのにも関わらず、堂々と私との仲を見せつけている。

「う、うん。そうだね。帰ろっか」

でもまだ手は繋がない。とはいっても会社の人にイチャイチャしているところを見られるのは恥ずかしい。
付き合っていることは隠しているが、社内でも話す頻度が高いので、仲が良いことはバレているような気がする。
バレていたとしても今のところ嫌がらせを受けたりはしていないので、まぁ大丈夫であろう。
きっと誰も付き合っているなんて思ってもいないはず。だから誰も咎めないのかもしれない。
それはそれでラッキーだったということで。何も気にしないのが一番だ。
とはいえどもわざと煽るようなことはしたくないので、抑えるところは抑えるようにしている。
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