恋の微熱に溺れて…
「そっか。これだけ広かったらつい、気になって色々買っちゃうかもね」

「そうですね。今日はできるだけ荷物を増やしたくないので、なるべく目移りしないように頑張ろうと思います」

慧くんが目移りしなくても、私の方が目移りしてしまいそうだ。
人は初めて訪れたお店は、いつも足を運ぶお店の二倍魅力が増す。
更に恋人がいつも目移りしてしまうということは、そんなの私ならもっと目移りしてしまうに決まっていた。

「私も気をつけようと思う。私の方が誘惑に負けることが多いから」

「京香さんもいつも目移りしちゃうんですか?」

そんなことばかりだ。食いしん坊な自分が憎い。

「美味しそうなものを見ちゃうとつい…」

「分かります。甘いものとか見ちゃうと、自然に手が伸びてます」

その気持ちはよく分かる。私も気がついたら甘いものに手を伸ばしていることが多い。
きっと仕事の疲れを甘いもので癒そうとしているのかもしれない。

「慧くんもなんだ…。皆そんな感じなんだね」

「そうみたいですね。せっかく長いお休みなので、甘いものも買いましょう」

「いいね。そうしよう」

ダラダラした寝正月を想像してしまった。ずっと食べたり飲んだりしてそうだ。
裏を返せばお正月くらいしかダラダラすることができないので、それもそれでアリだ。

「でもまずその前におせちを買わないとですね」

今日の目的はお節料理を買うことであり、それ以外に特に目的はない。

「そうだね。おせちコーナーに行こう」

今日は年内最後の日ということもあり、店内にはたくさん人がいる。
これはおせちコーナーまで行くのが大変だ。
何とか人混みをかき分けて、おせちコーナーへと向かう。
おせちコーナーに向かったのはいいものの、先程よりも人がたくさん集まっていて。
これじゃ商品をチェックすることすらできない。
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