恋の微熱に溺れて…
「やっぱり人が多いね。おせちを手に入れるだけでも大変だ…」

普段、食料品を買いに行くだけなら、ここまでスーパーが混んでいることはない。
でもたまたま年の瀬ということもあり、年内中に買い物をしておきたい人が多いのであった。

「また頑張って人をかき分けて、なんとかおせちを手に入れましょう」

慧くんにそう言われたので、私達はなんとか頑張って人混みをかき分けて、おせち料理のコーナーに近づいた。
手を伸ばし、目的の商品をカゴの中へ入れていく。買いたい商品を全て手にれることができたので、おせち料理のコーナーをすぐに抜けた。

「無事に手に入りましたね…」

「だね。残ってて良かった」

甘くみていたわけではないが、こんなにも激戦区とは知らなかった。
来年からは早めにおせちを注文しておこうと思う。

「さて、次はお酒コーナーへ行きますか」

大人のお正月といえばお酒が大事だ。
特にこの時期は日本酒。日本酒を飲むためにお正月を楽しみにしている。

「行こう。お酒は絶対に大事。絶対に買う」

食いしん坊なだけではなく、飲兵衛でもある私…。こういうところが色気がないなと落胆する。

「大事ですね。酔った京香さんは京香さんで可愛いです」

落胆していた自分が、大好きな彼の一言ですぐに浮上する。
本当に現金だなと思う。そんなことを言われてしまえば、たくさんお酒を進んで飲んでしまいそうだ。

「もう…。恥ずかしいな。たくさん飲んじゃうからね?」

ちょっと私も困らせてみたいなと思い、自分なりに慧くんを困らせることを考えてみた。
考えてみた結果、人様の家でたくさんお酒を飲む女は嫌なはず。これならさすがに慧くんも困ってしまうであろう。

「いいですよ。たくさん飲んでください」

全然困らせるどころか、彼氏の器が大きかった。
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