恋の微熱に溺れて…
「お待たせしました、どうぞ」

まさか、代わりに一人で買ってきてくれるなんて、思ってもみなかった。
私が恋愛経験に乏しいから、こういったことを予測できないのかもしれない。
年下に奢らせてしまったことを、申し訳なく思った。

「ごめんね。慧くんに買いに行かせちゃって…」

「気にしないでください。俺がやりたくてやったことなんで」

そう言われてしまうと、慧くんの優しさが嬉しいと思ってしまう。
なので、ここは慧くんのお言葉に甘えることにした。

「ありがとう。それじゃ遠慮なく、いただきます…」

目の前に置かれた食べ物や飲み物を手に取り、口付けた。
美味しい。慧くんと一緒に食べているから、いつもの何倍も美味しく感じるのかもしれない。

「美味しい…」

「はい。美味しいですね」

慧くんもとても美味しそうな表情を浮かべていた。
好きな人と一緒に居ると、どんなことでも幸せを感じられるなと思った。

「京香さん。食べ終わったら、またアトラクションに乗りませんか?」

このままずっとここでゆっくりしていても構わないが、慧くんがそうしたいのであれば、私は別にそれで構わなかった。

「いいよ。そうしよっか」

私がそう言ったら、慧くんは安心したみたいで。そこまでして乗りたいアトラクションがあるんだなと思った。

「それでは、食べ終わったら、アトラクションに向かいましょう」

慧くんの満面の笑みに、私の心は射抜かれたのであった…。
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