恋の微熱に溺れて…
「お待たせしました。俺もお風呂から出ました…」

慧くんは髪を洗ったのであろう。髪が濡れている。水も滴る良い男が今、目の前に居る。

「おかえり。髪洗ったんだね」

私がそう聞くと、濡れた髪を指で触りながら答えた。

「はい。洗いました。俺は男なんで、髪が短いからすぐ乾くので。…ってまだ乾かしてないですけどね」

気まずそうにそう言った。慧くんは髪が濡れていることを気にしているみたいだ。
私が濡れた髪について触れたからであろう。気にしないでもらえるといいなと思い、私が湯上がりの彼に見惚れていたことを白状することにした。

「ごめん。髪の毛を乾かしてないことを責めてるわけじゃなくて、実は湯上がりの慧くんが色っぽっくて見惚れてただけなの」

正直に白状した途端、恥ずかしさが込み上げてきた。
言わなきゃ良かった。いや言っても良かったかも。そんな自問を心の中で繰り広げ、葛藤していた。

「そうだったんですね。それは嬉しいです。でも少し恥ずかしいです…」

艶っぽい彼が、一気に顔を真っ赤にし、それはそれで可愛くてときめいた。

「変なことを言ってごめんね。今のは忘れて…」

すると彼が私に近づいてきて、私の腕を掴んだ。

「忘れません。好きな人にそう言われて嬉しくない人なんていないです」

彼の顔が私の顔に近づいてきて、私の唇にキスをした。そっと触れるだけの優しいキスを。
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