恋の微熱に溺れて…
二人でキッチンへと向かい、一緒に夕飯の準備を始めた。
私がお風呂に入っている間に、慧くんが夕飯を作っておいてくれたので、後はテーブルに運ぶだけだ。
ちなみに夕飯は鍋だ。ガスコンロを持って、その上に鍋を置いた。
私は取り分け皿と取り分け用の菜箸とお玉、そして自分達が食べるのに使う箸を運んだ。

「準備が整いましたし、鍋の火が通るのを待っている間に、一杯やりましょうか」

再びビール缶が登場。慧くんが一缶、手渡してくれた。

「やりますか。それじゃ乾杯」

「乾杯…」

缶の蓋を開け、お互いにお互いの缶を合わせて乾杯をする。
そのまま口元までビール缶を持っていき、口の中へビールを流し込む。
お風呂上がりということもあり、ビールがより一層美味しく感じる。

「…んー、美味しい」

「美味しいですね。お風呂上がりのビールは最高です」

確かに最高だ。乾いた喉を潤してくれる。

「最高だね。これのために生きていると言ってもいいくらいに」

少し大袈裟な表現かもしれないが、そう思ってしまうほどお風呂上がりのビールは美味しいのであった。

「分かります。それぐらい美味しいと感じますよね」

不思議なものだ。人って美味しいと感じるシチュエーションが大事なんだなと思った。

「なんだろうね?不思議な感覚だね」

呑気にお喋りに耽っていたら、鍋がグツグツしてきた。

「グツグツしてきたので、火を止めますね」

慧くんがコンロの火を止めてくれた。そしてついでにミトンを付けて、鍋の蓋を開けてくれた。

「京香さん、装うのでお皿貸してください」

言われるがままにお皿を差し出す。慧くんに装ってもらう気満々だ。

「お願いします。装ってください」

「任されました。食べたいものはありますか?」

具材が何が入ってるのか分からないので、慧くんに一度、中身を聞いてから装ってもらうことにした。
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