恋の微熱に溺れて…
「いっぱい食べましたね…」

「食べたね。お腹がいっぱいで動けないよ」

「ですね。こうやってゴロゴロするのも悪くないです」

確かに悪くない。慧くんと二人でゆっくりできて幸福感を感じている。

「あ!もう紅白が始まってる!」

絶対に見たいというほど楽しみにしていたわけではないが、できれば特別な時にやる番組は慧くんと一緒に居るから見たい。

「紅白見ますか。テレビつけますよ」

慧くんがリモコンを手に取り、テレビをつけてチャンネルを紅白にしてくれた。

「ギリギリセーフでしたね。今から始まるみたいです」

私的にはなんとなく見たかっただけだが、慧くんは気にしてくれていたみたいで。時間が間に合ったことを安心しているみたいだ。

「そうだね。…紅白、始まったね」

二人でソファの上に寝転がりながら、ぼーっとテレビを見る。
特にお目当てのアーティストはいないが、皆が知っている人気歌手やアイドル、バンド、大御所の歌手まで、一年に一度の大きな舞台に一斉に集う。
この舞台に呼ばれるということは、芸能人として大きな意味があって。とても大事なことなんだなと、素人ながらにそんなことを思いながら歌手の方々が歌う姿を見ていた。
知っている曲が披露されたら、「この曲知ってる」とか、「この曲好き」とか、他愛のない会話をしたりした。
そんなゆったりした時間を過ごしていたら、あっという間に紅白は終わった。
ということはもう少しで今年も終わる。あと残り十五分。今度はまた別のカウントダウン音楽番組にチャンネルを変える。
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