恋の微熱に溺れて…
「そんなに良かったですか?俺とするの」

そう聞かれると、素直に、“うん”とは言いたくなかった。

「もう。変なこと聞かないで……」

「ごめんなさい。あまりにも可愛いすぎて、ついからかいたくなっちゃいました」

慧くんも慧くんで、緊張していたこともあり、私の反応が気になるのであろう。
私の反応一つひとつに反応してくれる慧くんを、愛おしいと思った。

「大丈夫だよ。慧くんも可愛い」

「可愛い…ですか?」

慧くんは私に可愛いなんて言われて、複雑な気持ちであろう。
私は愛おしいという気持ちを込めて言ったが、もっと言葉を選んで言うべきだったなと反省した。

「ごめん。嫌だった…?」

「カッコいいって言われる方が嬉しいですが、京香さんに可愛いって言われると悪い気はしないです」

そう言ってもらえて、私の心は救われた。
そして同時に、今度からはなるべくカッコいいと言えるようにしようと思う。

「それに、可愛いって思ってもらえるということは、たくさん甘えてもいいってことですよね?」

逆手に取られた。さすが慧くん。自分をよく分かっているなと思った。
使えるところで、自分の武器を使う。私は慧くんの巧みなテクニックに翻弄されていた。

「いいよ。どうぞ、甘えてください」

すると、慧くんは私に抱きついてきた。後ろから包み込むように。

「京香さん。俺、もう一回したいです」

耳元で甘く囁かれた。
その声に、私は敏感に反応してしまった。

「…私もしたい」

こんなことを強請るなんて、恥ずかしくて。絶対にできないと思っていたけど、慧くんからお願いされたことが嬉しくて。
つい、舞い上がってしまい、私も大胆な行動に出た。
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