恋の微熱に溺れて…

6度:触れ合う喜び

初めてを経験したあの日の夜以来、ずっと頭の中で悶々としている。早く触れ合いたい。慧くんと…。
狂ったかのように、頭の中はそのことでいっぱいで。自分でも不思議なくらい飢えていた。
手を伸ばせば、いつでも届く。
でも、平日は普通に仕事。仕事が終われば、普通に疲れて、ただ家に帰るだけ。
そんな中で、二人の時間を作るのは難しい。平日はお互いに自分の時間を大切にしたい。
その分、土日を一緒に過ごしたい。あなたの温もりに包まれながら…。

「葉月さん、何か良いことでもありました?」

隣の席に座る、同僚が話しかけてきた。
どうやら、顔に出ていたみたいだ。恥ずかしい。仕事中は気持ちを切り替えて、顔に出さないよう気をつけようと思う。

「ううん、何もないよ。帰ったら何食べよっかなって考えてただけ」

まさか社内で一番人気の羽月くんとお付き合いしていて、その彼との夜について考えているなんて、口が裂けても言えなかった。

「美味しい食べ物のことを考えてたら、そうなっちゃいますよね。私も帰ったら何食べよっかな…」

なんとか上手くこの場を乗り切ることができた。バレたら、全女性社員から恨まれそうだ。
それはできるだけ避けたい。このままずっと誰にもバレずに、お付き合いを続けていきたい。
しかし、あながち嘘でもなくて。今は本当に帰ったら何を食べようか考えている自分がいる。
そんな時、あと三十分で仕事が終わるといったタイミングで、スマホのバイブが鳴った。
誰から送られてきたんだろう?ただの通知かと思って確認したら、慧くんからメッセージが届いていた。
メッセージの内容を確認すると、お誘いのメッセージだった。
< 31 / 130 >

この作品をシェア

pagetop