恋の微熱に溺れて…
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お昼ご飯を食べ終わった後、特に会話もせずに、会社に戻った。
もう二度とお昼に誘われることはないだろうなと思っていたが、次の日も羽月くんはお昼に誘ってくれた。羽月くんの気持ちが嬉しかった。
それから毎日一緒に食事をするようになって、距離が縮まった。
そんなある日、羽月くんから提案された。
「僕達、漢字は違いますけど、苗字が一緒なので、チームの人達が名前を呼ぶ時、どっちのことを指してるのか分かりづらいと思うんです。そこで提案なんですが、お互いに下の名前で呼び合うのはどうですか?」
確かに羽月くんの言う通りだ。業務を滞りなくこなすために、苗字が同じ私達は名前で呼び合う方がやりやすい。
「そうだね。それじゃお言葉に甘えて、慧くんって呼ばせてもらうね」
一瞬、慧くんの顔が赤くなった。慧くんのようなモテる男性でも、名前呼びされると照れるんだなと思った。
「分かりました。僕も京香さんって呼ばせてもらいますね」
男性に名前で呼ばれるのなんて、学生の頃以来なので、私まで顔が赤くなってしまった。
「うん。分かった。改めてよろしくね」
ただお互いの名前を呼んだだけなのに、気恥ずかしい空気が流れ始めていた。
上手く空気を変えられないまま、時間だけが過ぎていき、黙々と食事をし、会社に戻った。
距離が縮まっているはずなのに、なかなかあと一歩が踏み出せない。
ただの仕事仲間という関係なので仕方がないが、私が上手く会話を続けられないせいもある。