恋の微熱に溺れて…
声を聞くからに、一人ではない。二人いる。低い声と高い声がするので、男女で一緒に居るみたいだ。
全く仕事中にイチャイチャするなんて誰だ?どんな奴か確認してやろう。
そう思い、声がする方を軽く覗き込んでみた。今思えばこの時、覗かなければよかったと激しく後悔している。だって、そこに居たのは…。

「慧くん、誰かに見られたらまずいよ…」

「大丈夫です。皆さん仕事してますので」

いや、お前らもちゃんとしろよ。仕事中だろうが。思わず、心の中でツッコんでしまった。
そこに居たのはなんと葉月とイケメン後輩だった…。

「そういう問題じゃないよ。ほら早く戻ろ?」

葉月がイケメン後輩とプロジェクトで一緒になり、よく一緒に仕事しているのは知っていた。
でもまさか、あの葉月がイケメン後輩とここまで仲良くなっていたなんて知らなかった。
今の俺には、二人の姿がとてもショックだった。

「まだダメです。あともう少しだけ一緒に居たいです」

心の中で祈った。葉月、イケメン後輩(コイツ)の頼みを断ってくれ…と。
この期に及んで、どこかでまだ期待している自分がいる。何もないでくれと…。
でも、こんな俺の願いは、虚しく散っていくのであった。

「しょうがないな。あと少しだけだよ」

初めて葉月の女の部分を見た。その姿がとても厭らしくて。同時にとても嫌悪感を抱いた。
自分の前だけで見る姿なら、とても嬉しかったし、見たいと思う。
でも、他の男の前で見せる姿なんて、見たくないに決まってる。とても悔しかった。
居た堪れなくなり、その場を静かに去った。
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