恋の微熱に溺れて…
もっと仲良くなりたい。もっと普通に話せるようになりたい。
もう少し頑張って話せるように努力しようと決意した。


           *


...なんて思ったものの、やっぱり上手く喋れるわけもなく。
そんな私に呆れることなく、慧くんは変わらずに私をご飯に誘ってくれる。
それが心の支えで。人として嫌われていないということに安心する。
いつまでこのプロジェクトが続くか分からないが、もう少し長く続いてほしい。もう少し一緒に居たい。

「京香さん、お昼行きませんか?」

今日も慧くんが声をかけてくれた。もちろん、私の答えは...。

「うん。行こっか」

嬉しい気持ちを胸の内に秘めながら、今日も慧くんとお昼を共にする。
相変わらず、いつも通り途切れ途切れでお喋りをする。
最初は気まずく感じていたが、最近はこの空気に慣れたこともあり、安心している自分もいる。
慧くんとは、こうして仕事上で仲良くできるだけでも嬉しい。プライベートで繋がりを持ちたいとは思っていないが、せめて連絡先だけは知りたい。特に必要もなく連絡したりなんかはしない。迷惑はかけないから、慧くんとの繋がりが欲しいだけだ。
多くは求めないが、それでも求めてしまう。それが誰かを好きになるということなのかもしれない。身を持って知った。

「京香さん。僕、京香さんとこうして一緒にご飯を食べたり、お喋りできるようになれて嬉しいです」

不意打ちにそう言われた。胸が高鳴った。
どうして今、そんなことを言うの?そんなことを言われたら、もっと意識してしまう...。

「そう言ってくれて、ありがとう。私も嬉しい。こうして一緒にご飯を食べたり、お喋りできるようになって...」
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