恋の微熱に溺れて…
「はい。ごめんなさい…」

まずは慧くんの方が先に折れた。自分の彼氏が先に折れてくれて、心から安心した。

「ごめん。悪かった」

遅れて如月くんも折れてくれた。なんとかこの場を丸く収めることができ、一件落着だ。

「それじゃ二人共、仕事に戻りましょ。もうこの件はこれでお終い」

私は先に一人で戻った。二人も遅れて持ち場に戻った。
人間関係は性格などの相性もあるため、合う・合わないはある。
それにしても、二人は合わなさすぎる。しかも思いっきり、敵意を剥き出しにしている。
過去に何かあったのかな?と思うくらい、隠しきれない態度に、私は戸惑っている。
放っておいたら、嫌な予感しかしないけど、個人的に如月くんとあまり関わりたくない。
だから、なるべく如月くんとは関わらないようにして、二人をなるべく接触させないように気をつけた。


            *


一人で帰り道を歩いていると、後ろから肩を叩かれた。
振り返ると、そこには慧くんがいた。

「慧くん。どうしたの?」

こういう時、普段はお互いに声をかけない。
でも、今日は声をかけてきた。何か用事でもあるのだろうか。

「…今日、家に来てください。来てほしいです」

腕を掴まれた。そのまま一緒に駅まで歩いた。

「慧くん、ちょっと待って…」

慧くんのペースで一緒に歩いていたら、息が上がってしまった。
もうこれ以上は、このペースで歩くのは難しかった。

「ごめんなさい。無理矢理、腕を掴んでしまって…」

慧くんは腕を掴まれたことに対して、私が嫌がっていると勘違いしているみたいだ。
私は慌てて否定した。腕を掴まれたことは嫌ではないと…。
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