恋の微熱に溺れて…
「ううん。腕のことは大丈夫。ただ歩くスピードが速すぎて…」

私の言葉を聞くと、慧くんは安心したみたいで。肩の力が降りたみたいだ。

「それはごめんなさい。気をつけます」

いつもの慧くんの笑顔に戻った。
その顔を見ただけで、私は心から安心した。

「誘ってくれてありがとう。慧くん家に行きたいです」

今度は私が慧くんの腕を掴んだ。もう人目なんて気にしている余裕すらなかった。

「…京香さん。俺、色々とごめんなさい」

申し訳なさそうに、一言そう呟いた。私は優しく受け止めた。

「大丈夫だよ。慧くんはあまり気にしないで」

慧くんは今、心に余裕がない。私が慧くんを支えてあげたい。

「俺、自分のことで精一杯で。如月さんは油断も隙もないですし」

私には如月くんが何を考えているのか分からない。
なので、対処方法も分からず、困っている。

「そうなの?何を考えてるのか、分からないところはあるけど」

すると、慧くんは私を心配そうに見つめた。
私はその眼差しから、目が逸らせなかった。

「そこが危うんです。京香さん、絶対に気をつけてください」

そう言われても、私は気をつけているつもりだが、如月くんは神出鬼没に現れるため、行動が予測できない。
一つだけ分かることがあるとするならば、なるべく一人で休憩しないように気をつけるだけだ。
< 56 / 133 >

この作品をシェア

pagetop