恋の微熱に溺れて…
「うん。そうしたい。だから、そうする」

「分かりました。それじゃ、ここで待っててください。鍵はかけておいてくださいね」

そう言って、慧くんは部屋から出て行った。きっと早退することを伝えに行ってくれたのであろう。
私は言われた通りに鍵をかけて、ここで待った。早く慧くんが駆けつけてくれないかなと思いながら…。
すると、足音が聞こえてきた。そして、再びドアがノックされた。
慧くんかもしれないと思い、開けようとした瞬間、声が聞こえてきた。

「葉月、ここに居るのか?」

この声は如月くんだ。ドアにかけた手を一旦引き、居ないフリをすることにした。

「…鍵がかかってるな。やっぱりここに居るのか?」

そう問われて、正直に答えるほど、バカじゃない。無視し続けた。

「このまま聞いてくれ。さっきは本当にごめん。逃げられるのが嫌で。自分の気持ちしか見えてなかった。
周りにはちゃんと説明しておいたから。俺達は付き合ってないって。
本当にごめん。それだけ伝えに来た」

如月くんはそれだけ伝えると、その場を去った。
私は突然のことに、まだ脳が追いついていなかった。
軽くショックを受けていると、また足跡が聞こえてきた。

「京香さん、慧です。開けてください」

今度こそ慧くんの声だ。私は迷わず、扉を開けた。

「すみません。お待たせ致しました。…京香さん、何かありましたか?」

慧くんは私を見てすぐに分かったみたいだ。
私は今あったことを正直に答えた。
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