恋の微熱に溺れて…
「さっき如月くんが来て。謝って去ってたの…」

私の言葉を聞いた瞬間、慧くんの怒りは頂点に達した。

「…許せません。俺の彼女を傷つけておいて、俺の居ないところで接触しようとするなんて」

「ドア越しだったから、直接会ってはいないよ」

「そういう問題じゃありません。京香さんの気持ちを一切考えていないことに、腹を立てているんです」

慧くんのその一言を聞いて、私は腑に落ちた。
そっか。私がずっと感じていた違和感は、これだったのだと…。

「京香さん。俺、今日は京香さんを一人にしておけないので、家に来てください」

慧くんのたった一言に、私は救われた。
慧くんがいいのであれば、是非ともお邪魔させて頂きたい。

「うん。そうしたいです。なので、よろしくお願いします」

こうして、このまま慧くん家へ行くことになった。
慧くんも一緒に早退してくれて。とても心強かった。
きっと早退の報告をする時に、自分が送っていくと言ってくれたのであろう。
ついでに荷物まで持ってきてくれて。何から何までお世話になりっぱなしだ。

「ありがとう。慧くんが居てくれて心強いよ」

お礼を伝えずにはいられなかった。

「俺は京香さんのためなら、なんだってできますので」

「本当に慧くんのその気持ちがとても嬉しい」

「俺も嬉しいですよ。京香さんにそう言ってもらえて」

今はその一言が心の支えになっていた。
でもこの後、この一言が私の心の中を圧迫するなんて、この時の私は知る由もなかった。

「さて、お家に帰りましょうか」

照れて誤魔化された。そんなところも愛おしく感じた。
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