恋の微熱に溺れて…
一口頬張った瞬間、卵の甘みとパンの甘みがいい感じに混ざり合い、口の中で美味しくハーモニーを奏でている。

「美味しい!…ねぇ、慧くん。美味しいから一口食べてみて」

慧くんにもこの味の美味しさを分かってほしいと思い、自ら差し出した。

「いいんですか?ではお言葉に甘えて。いただきます…」

慧くんが私のサンドウィッチを一口食べた。
自分から勧めたくせに、慧くんがかぶりついて食べた瞬間、ドキッとした。

「めちゃくちゃ美味しいですね!卵がふわふわで、パンも美味しい…」

私の気持ちを分かってくれた上に、代弁してくれて嬉しい気持ちの反面、大胆な行動に出た自分が恥ずかしくなってしまった。

「…京香さん、どうかしましたか?」

私が黙っていたせいで、慧くんが心配している。
私は慌てて否定した。

「えっと…その、何も考えてなかったのね。改めて考えてみたら、間接キスだなと思って」

自分でも何を言っているのだろうかと思う。
こんなことを言われたら、変な空気になってしまうのに。

「確かにそうですね。でも、俺はあまり気にしないですよ。寧ろどんな形でも、京香さんとキスできて嬉しいです」

慧くんの方が更なる上をいく、爆弾発言をかました。
慧くんの言う通り、キスできて嬉しいけど、でもなんだか恥ずかしい。ただ食べ物を食べているだけなのに…。

「う、うん…。私もキスできて嬉しいよ?」

キスには色んな種類がある。慧くんと付き合い始めて、私は初めて知った。
全くそういった知識がなかったわけじゃない。ただ経験がないので、知らなかっただけだ。
知ったことにより、好きな人とするキスが、とても愛おしいと感じるようになった。
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