恋の微熱に溺れて…
《俺もちょうど今、仕事が終わりました。
いつもの待ち合わせ場所で落ち合いませんか?》

きっと慧くんなりに気を使ってくれたのであろう。
その優しさが、私は嬉しかった。改めて慧くんに大事にされていると知り、心から安心した。
ついでに如月くんからメッセージが返ってきていないか、確認した。
返事はなかった。向こうから誘ってきたくせに…。
でも一応、断りの連絡は入れたので、気にしないことにした。
そのまま慧くんとの待ち合わせ場所へと向かった。
すると、先に慧くんの方が待ち合わせ場所に来ていた。

「慧くん…」

私が声をかけると、慧くんはすぐに気づいてくれた。
私はそれだけで、一気に明るい気持ちになって。慧くんに会えただけで、幸せを感じた。

「京香さん。お疲れ様です」

爽やかな笑顔でそう言われ、私の疲労は吹き飛んだ。

「ありがとう。慧くんもお疲れ様」

「いえいえ。今日は来て下さり、ありがとうございます」

もちろん、来ないわけがない。好きな人に会えるのだから。

「私の方こそ、この間はごめんなさい。何も言わずに黙って帰っちゃって…」

いくらその時の慧くんが怖かったにせよ、その後、一切連絡にも応じず、だんまりを決め込んだのはよくなかったと思う。
もし、自分が逆の立場だったら、とても心配したし、そんなことをされたら悲しい。
だから、ちゃんと謝った。もう二度とこんなことはしないという誓いの意味も込めて。
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