恋の微熱に溺れて…

11度:決着

職場の人にバレないようにするために、離れた場所を選んでいるとはいえども、ここは比較的に職場から近い。
誰が見ているか分からないこのような場所で、告白されても困る。寧ろ迷惑だ。

「京香さん、すみません。少し強引にさせて頂きます」

耳打ちした後、慧くんが私の手を掴み、その場から走り去って逃げた。

「もうここまで来れば大丈夫ですかね」

慧くん家の最寄り駅の路線のホームまで走った。
慧くんが私の気持ちを察して、ここまで連れて来てくれたことに感謝した。

「ありがとう。あの場から連れ去ってくれて…」

「いえいえ。さすがにあの場所での告白は、俺でもされたら嫌です」

どんなことでも、時と場所を選ぶのは大切だ。
じゃないと、告白される側も受け止めきれない。返事をするのさえも、人の目を気にしてしまう。
それを分かった上で、如月くんは告白してきたのだろうか。
だとしたら、私は如月くんに対して、良い印象を持てない。

「うん。そうだね。私も嫌かな」

苦笑いして誤魔化した。きっと慧くんにはバレているだろうけども。

「…電車がきました。続きは家で話しましょう」

タイミング良く電車がやってきた。
これで如月くんが追いかけてきても、逃げ切れそうだ。

「うん。そうしよう」
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