恋の微熱に溺れて…
安心した気持ちで電車に乗った。
平日にこんなバタバタした気持ちになるなんて、思わなかった。
色々予想していない出来事の連続に、私の心は追いつかない。既に疲弊している。この状態で一週間持つか、心配だ。
そんな疲れた心と身体のまま、電車に揺られながら、慧くん家へと向かった。


           *


慧くん家に着いた途端、一気に冷静さを取り戻した。
今までこういったことに縁遠かったため、いざ直面すると、どうしたらいいのか分からなくなってしまう。
焦ることではないけども、慣れないことには上手く対処できない。
慧くんが傍に居てくれてよかった。私一人じゃどうにもできなかった。

「慧くん、ここまで連れてきてくれてありがとう」

「いえいえ。お礼を言われるほどのことでもありません。俺が家に京香さんを連れて来たかっただけなので」

それでも、私一人じゃどうにもできなかったのは事実で。
慧くんが優しくて。私の傍に居てくれるから、私は冷静になることができた。
慧くん家まで逃げ切ることができたのは、慧くんのお陰だ。
そして、仲直りをするきっかけをくれたのも、慧くんのお陰で。
全部引っ括めて、私は慧くんにお礼を伝えたかった。

「私も慧くん家に来たいって思ってたから、来れて嬉しいよ。それに目的は仲直りなわけだし」

如月くんのことなんて、偶然起きた出来事に過ぎない。
あくまで本日のメインは、慧くんと仲直りすること。
でもある意味、如月くんのお陰で既に仲直りできているような気がする…。
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