恋の微熱に溺れて…
もうここまで深く関わることはなくても、仕事上の付き合いがなくなるわけではない。
それでも、付き合いがあるのだから、まだ良い方だと思っている。

「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

爽やかな笑顔でそう言われた。
その笑顔に思いっきり当てられた私は、まだそんなに酔っていないのに、一気にお酒が回った。

「すみません!ビールおかわり」

慧くんが隣に座っていると思うだけで、ドキドキしておかしくなってしまう。
緊張を和らげるために、お酒をハイペースで飲んだ。

「京香さん、ペース大丈夫ですか?」

「らいじょーぶ。結構、あたし、おしゃけ強いからぁ」

「いや、大丈夫じゃないですよ。もう呂律が回ってないですよ?」

自分ではその自覚がないため、ちゃんと喋れているつもりだ。

「しょんなことないもん。慧くん、虐めないでぇ...」

酔っぱらいの私に絡まれて、慧くんは困った表情を浮かべていた。
それもそうか。誰だって酔っぱらいに絡まれたら迷惑だ。
私はここで記憶を失った。慧くんに嫌われたくないという気持ちから、現実逃避するために、意識を手放した。


           *


「んん...」

目を覚ますと、真っ先に知らない天井が視界に入ってきた。
あれ?ここはどこ?慌てて起き上がろうとしたら、今度は天井ではなく、慧くんが視界に入ってきた。
一体、これはどんな状況なの?私は状況を上手く呑み込めないまま、この状況に困惑していた…。
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