恋の微熱に溺れて…

13度:穏やかな時間

如月くんに告白されてから、数日が経過した。
さすがに職場で返事をするわけにはいかないので、それ以外となると中々タイミングが難しい。
早く答えを言って、はっきりさせたい。
でも、こういうのはタイミングが大事なので、いつ言えばいいのか分からず、時間だけが過ぎていった。

もうこのままでもいいかもしれない。そう諦めかけていた。
慧くんも事情を知っているし、向こうから触れてこない限り、こちらから触れる必要はない。
寧ろこちらからその話題に触れて、面倒くさい事になるのは避けたい。
ちゃんと答えを告げないで、逃げるのは不誠実かもしれないけど、時には触らぬ神に祟りなしということもある。

そう自分に何度も言い聞かせて、心を落ち着かせた。
そうすることしかできないといった方が正しいが…。
心にモヤモヤを抱えたまま、今日も何事もなく終わった。
疲れたからそのまま帰宅しようと思っていたら、メッセージが届いた。

《今日、一緒に帰りませんか?》

慧くんからのメッセージだった。
もちろん、答えは決まっている。

《うん、いいよ。一緒に帰ろう》

モヤモヤした気持ちが、一気に晴れやかな気持ちに変わった。
好きな人って偉大だなと、改めて思い知った。

《それじゃ、会社の出口を出て、右に曲がったカフェで落ち合いましょう》
< 80 / 241 >

この作品をシェア

pagetop