恋の微熱に溺れて…
もういつもの待ち合わせ場所で落ち合うのは、この間のこともあり、二人の間で自然とタブーになっていた。
だから、二人で新たな待ち合わせ場所を考えて決めた。

《分かった。そうしよう。帰り支度が整ったら、そっちに向かうね》

そう送ってから、私は帰り支度を始めた。
横目でチラッと確認した。慧くんは支度を終え、先に待ち合わせ場所へと向かったみたいだ。
それを見て、私も少し急いで支度を始め、そのまま待ち合わせ場所へと向かった。
待ち合わせ場所に着くと、慧くんが待っていた。
私は慧くんの元へと駆け寄った。

「慧くん、お待たせ」

私が声をかけると、彼は私の声に振り向いてくれた。いつもそれだけで嬉しくなってしまう。
だって、彼も私と会えるのが嬉しかったのだと思うと、心が踊らないわけがなかった。

「いえ。そんなに待ってないので大丈夫ですよ」

本当にそう思っているのが伝わってきた。慧くんに愛されているという実感が持てた。
慧くんと一緒に居ると、とても心が落ち着く。穏やかな気持ちになれる。
もう私には、この人しかいないと思っている。
それぐらい、私にとって大切な存在になっている。
この穏やかな時間が長く続いてくれることだけが、私の願いだ。

でも今、心から穏やかになれているかというと、百パーセントそうとは言えない。
やっぱり心の中のどこかで、如月くんに対して返事を出せていないという罪悪感がある。
このまま答えを有耶無耶にしても…と思う自分と、いやさすがにそれは不誠実では?と思う自分がいて。自分で自分の板挟み状態である。
分かってる。如月くんのことは気にしても仕方がないと。
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