恋の微熱に溺れて…
「ちょっとね。でも内緒」

「えー。でもそういうことをされると、余計に気になっちゃうじゃないですか」

私と慧くんが付き合っていることは、今のところ如月くん以外、知らない。
だから当然、言えない。私と慧くんだけの秘密だ。

「そうなの?そう言われてもな…」

「葉月さんは逃げるのが上手ですね。その逃げの上手さに免じて、これ以上追求するのは止めておきますね」

大人の人間関係は、お互いにある程度の適切な距離感があり、その領域から踏み越えることはない。
同僚はその点の匙加減が上手い。私が嫌なオーラを出せば、良いところで引き上げてくれる。
この関係性が心地好くて。とても楽に感じている。
ずっとこういう関係でいたい。友達…とはまでいかないけど、気心が少し知れた楽な関係。

今、私は充実していて幸せだからか、見えている景色が今までよりもカラフルに見えて。毎日が楽しくて仕方がなかった。
これが恋か。知らなかったものを知り、新しい世界がとても煌びやかで。心が踊った。

私はずっと勝手に自分で決めつけて、縁がないと言い訳をし、恋愛から遠ざかっていただけなのかもしれない。
初めて誰かとお付き合いをして、誰かに想い想われる幸せを知り、もう前の自分には戻れないと思った。
今日も慧くんと会う約束している。今から楽しみ過ぎて仕方がない。
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