恋の微熱に溺れて…

2度:お試しという甘い罠

「どうして、慧くんが一緒に...?!」

思わず、心の声が漏れてしまった。
好きな人と知らない場所に二人っきりなんて、動揺しない方がおかしい。

「京香さん、何も覚えてないんですね」

全く何も覚えていない。
というか、これってやばい状況なのかな?何か私、やらかしたの?

「ごめんなさい。何も覚えてないです...」

「それもそのはずです。だって京香さん、泥酔して寝ちゃったので。
それで俺が介抱します!って立候補して、ここまで京香さんを連れて来ました」

事の経緯を慧くんから聞き、良い大人が酔っ払って、醜態を晒してしまい、自己嫌悪に陥った。

「迷惑かけてごめん。このお礼は必ずするので...」

この時の私は、自分の発言が取り返しのつかないことになるなんて、思ってもみなかった。

「本当ですか?お礼して下さるって...」

そう言ってしまった手前、後にはもう引けない。
それでも、限度はある。特にお金がかかることとかは...。

「うん。いいよ。私にできる範囲内のことなら...」

一応、先に牽制しておいた。お金がかかることは限度があると...。
慧くんはそんな要求してこないと思うが、必ずすると言った手前、なるべく断らなくても良い道を探してしまう。
きっと一つ仕事を多くやってほしいとか、そういった要求に違いないであろう。
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