恋の微熱に溺れて…
「葉月、ちょっとこっちに来い」

私に声をかけてきたのは、如月くんだった。
あれから如月くんと話していない。お互いに気まずくて避けている。
そんな如月くんと久しぶりに話すので、身構えてしまい、緊張感が一気に走る…。

「あと、もう一人の羽月も。悪いけど、会議室を借りるな」

慧くんも呼び出されるなんて、何事だろうか。
もしかして、私達の部で何か大きな失態でも犯したのだろうか。一気に不安が押し寄せてくる。

「…おい、二人共。しっかりしろ。惚け過ぎだ」

会議室に入った途端、如月くんから説教された。
説教されても当然だ。実際、自分でも惚け過ぎているという自覚はある。
それぐらい今の私達は、周りが見えていない状態で。恋愛に溺れていた。

「…すみません」

「会社の人間に内緒で付き合っているのなら、もう少し自重して抑えろ。いつかバレるぞ」

確かに私達は、会社の人達に内緒で付き合っている。
極力、バレたくない。このままバレずに慧くんとのお付き合いを続けたい。
如月くんの言う通り、少し自重しないといけないなと反省した。

「そうだね。気をつけます」

恋愛にばかり現を抜かしていられない。
ちゃんと仕事をしないと、周りの人達に迷惑をかけてしまう。
なるべく迷惑はかけたくないので、私は気持ちを切り替えて、ちゃんと仕事をする決意を固めた。
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