恋の微熱に溺れて…
「悔しいですけど、今回だけはあなたの指摘を素直に受け入れます」

慧くんは悔しそうな表情を浮かべながら、素直に自分の非を認め、受け入れた。

「…伝えたかったことはそれだけだ。それじゃ、お先に失礼する」

如月くんは伝えたいことだけを伝えたら、本当に会議室を出て行った。
残された私達は、お互いに微笑み合った。如月くんの優しさに胸がほっこりした。まるで今までの出来事が幻かのように…。
そう思わせるくらい、如月くんは自分の中にある心の壁を乗り越えた。
私達もずっとこのままではまずいと、危機感を抱いた。

「今夜は自重しますね」

私も同じことを考えていた。
良い意味で夢から醒めて、落ち着きを取り戻せたのかもしれない。

「そうだね。また違う日に…」

これじゃ、違う日ならオッケーといっているようなものだ。そう受け取られても仕方がない。
とはいえ、あながち間違ってもいないので、敢えて否定はしなかった。否定する方が無粋だからである。

「それはもちろん。今は我慢して抑えているだけなので」

その言葉でさえも、胸がキュンとしてしまう。
恋は盲目とはよく言った言葉だ。本当に気をつけようと、改めて気を引き締めた。

「さぁ、仕事に戻ろう」

「はい。そうですね。戻りましょうか」

この日以来、会社では上手く気持ちを抑えられるようになった。
その分帰宅した後、思う存分イチャイチャしている。
ちゃんと時と場所を選び、これからも上手く気持ちを切り替えられるように頑張ろうと、私達は心に誓った。
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