恋の微熱に溺れて…
一緒にお風呂に入るだけなのに、こんなに喜ばれてしまうと、恥ずかしさが込み上げてくる。
世の恋人達は、この時間をどう過ごしているのだろうか。回数を重ねていけば、慣れるものなのだろうか。私は一向に慣れる気がしない。
お風呂自体はまだ一緒に入ったことがない。温泉以外で誰かと一緒に入ることなんて、大人になってからはない。
子供の頃は親と一緒に入ったりしていた。それも小学生ぐらいまでだが…。
それ以降は一人で入るのが当たり前になっていたので、誰かと一緒に入るだけで緊張してしまう…。
高校時代の親友との卒業旅行ももう十年以上前の話で。今の私なら同性のお友達でさえも一緒に入るのは恥ずかしい。
そんな私がまさか彼氏と一緒にお風呂に入る時がくるなんて思ってもみなかった。
恥ずかしさと想像力ばかりが膨らむ。どうやら自分でも気づかないうちに、そういったことを想像してしまうようになってしまったみたいだ。

「それじゃ早速、一緒に入りましょうか」

宿に着いて早々、いきなり一緒に入るの?
もう少し心の準備をする時間が欲しい。今はまだ早い…。

「…京香さん?」

私の返事がないことを不安に思ったのか、顔を覗き込まれた。
目が合った瞬間、もう逃げられないことを悟った。

「ごめん。ぼーっとしてた。でももう大丈夫」
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